増額して請求

交通事故の慰謝料を増額して請求することは可能か

交通事故の慰謝料とは、相手にけがを負わせられたことで傷ついた、精神的な部分を補償してもらう金銭です。精神的な金銭はお金では見積もることはできないと一般には思われていますが、民法ではあらゆる損害は金銭で補償するという規定を置いているので、金銭で解決を図っています。たしかに、交通事故のけがにより負った心の傷をいやしてもらうために、加害者が見せることができる誠意は、実際問題金銭を払うことだけであるため、一定の合理性はある制度だと言えます。

そんな慰謝料ですが、一度請求した後に増額をするということは一般的ではありません。なぜなら、訴訟においては、既判力というものがあるからです。これは、確定判決や和解などによって終局的に解決した問題を蒸し返さないために認められている効力で、民事訴訟法に定められています。つまり、一度、具体的な額の慰謝料を請求して、それに対する問題に目処が付いた場合には、増額は認められないのです。

しかし、それでは不都合が生じる場合があります。例えば、後遺症が後から生じた場合です。当初は、大した損害ではなかったけれど、後になって体に不具合が生じるということは、交通事故にはよくあることです。そういった場合にまで慰謝料を増額することができないとすると、被害者が救済されないこととなってしまいます。それでは妥当ではないので、裁判所は、事前に請求できなかった特別の事情がある場合には、相手が既判力について争うことは信義則に反するとして、請求を認めています。

また、最初の請求段階で、慰謝料の額が一部であるという点を明示していた場合にも同様に、後から追加して請求することは認められています。この場合には、相手も予め、後からさらに金銭を要求される可能性を想定することができるため、不利益にはならないということが理由となっています。ここでポイントなのが、予め一部であることを明示するという点です。つまり、内心で一部の請求だと思っていても、それが訴訟に現れていなければ、後から請求することはできなくなるという訳です。

以上のように、交通事故被害に遭った後の処理として慰謝料を請求し、それが確定した後は、原則としては増額は認められません。しかし、交通事故の被害者に酷である場合や、請求を受けた側にとって負担とならない場合には、後から損害賠償や慰謝料を増額して請求することは判例で認められています。この点は、よく注意しておく必要があるでしょう。